
Ormolu(オルモル)
フランス語でOrmolu 英語ではGilt Bronze と表記されるオルモル。
18世紀から19世紀にかけて芸術性の高いブロンズ(青銅)
または真鍮(ブラス)の装飾品に金メッキ(鍍金)を施したものを総称したものをオルモルといいます。
真鍮とブロンズの違いについて
ブラス(真鍮)=銅と亜鉛の合金
特性:複雑な加工品に向いている
ブロンズ(青銅)=銅と錫、そのほか亜鉛と鉛の四元素を主体とした合金
特性:靭性(じんせい)に富む性質=粘り強い 壊れにくい性質
奈良の大仏も青銅
ブロンズ:銅の比率が90%と高く残り10%を錫他の金属
ブラス: 銅の比率が6-70% 残り30-40% が亜鉛他
このようにブロンズのほうが銅の比率が高い。

18世紀初めにフランスで人気となったロココスタイル(様式)は
ヨーロッパの王侯貴族や上流階級の間にまたたく間に広がります。
その背景には、ブルボン王朝 4代目として即位したフランス ルイ15世(即位1715年ー1774年)の即位中は、
宮廷 や貴族の 邸宅を舞台にしたサロンと呼ばれる
社交界の交流が活発に行われたことも関係しています。

サロンの主催者の中には、公妾 ポンパドール夫人の名前も残されています。
( 前回のオールドパリの説明に出てくるポンパドールピンクの由来の女性)
サロンは、貴族や上流階級の人々の交流 や情報交換の場としてその役割をはたします。
そして選ばれた人の社交の場にふさわしい豪華で
エレガントな舞台の雰囲気作りに欠かせなかったものの一つが、オルモルなのです。
ロココスタイル(様式)とオルモルは切っても切れない関係なのです。

金属(メタル)の特性を最大限に生かし、
繊細でありながら豪華な雰囲気を身に纏ったオルモルはその装飾性だけでなく機能性も合わせ持ち、
装飾品や家具の一部またアクセサリーから建築様式にまで幅広く取り入れられました。

オルモルだけで作られた作品から技巧を凝らしたクリスタルガラスをはじめとする
さまざまなガラス類との組み合わせた作品は、オルモルをより魅力的なものにしていくのです。

オルモルとグラヴィール(ガラス彫刻)の融合

ロマンティックな雰囲気、
繊細でエレガントな佇まいをあわせ持つオルモルの世界観は
当時の貴婦人たちのこころを強く惹きつけました。

18世紀初めに人気となったロココスタイル(様式)

見せることを意識して作られた数々の作品は、
世代を超えて大切に受け継がれ、今も世界中の多くの人に愛され続けています。

家具の金具や装飾にオルモルが使われたナポレオンの居室

オルモルの衰退の原因
いわゆる本当の意味での1700年初めから1830年までに作られたオルモルは
その希少性から美術館、博物館で保存されるレベルのものが多く存在します。
実際に当時 金メッキの方法に水銀と金を混ぜ合わせ、
高温で水銀を蒸発させる方法がとられていたため、
空気中に蒸気となった水銀を吸い込む水銀中毒で命を落とす職人が多く出たため、
それまでのメッキ方法が使えなくなるのと同時にこのオルモルの流れが途絶えています。
現在のメッキ方法は、水銀を使わない方法となっています。
【 執筆 / 監修 】 小田 柚季
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