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Vol.8
ESSAY
◆ 骨董屋の愉しみ
人間が3度の食事を摂るのと同じく植物には水と栄養が必要ですが、それはアンティークにもいえること。
歳をとって少しくたびれたアンティークには優しい愛情を降り注いで元気になってもらいましょうということで
ここではお手入れのお話です。
お天気の良い日はパソコンの電源をパチッと落とし、
お店の窓をパァッと開け放してレースやリネンをお洗濯したり、布物の繕いをしたり、
くしゃくしゃになったファブリックのアイロンをかけたりと
ひがな1日、こんなふうにアンティークのお手入れに没頭していることがあります。
アンティーク(商品)の持ち味を壊さないように優しく手をかけてあげるのは楽しいお仕事ですが
永い年月を経てやってきたアンティーク(商品)はケガをしていることも少なくはありません。
ぐらぐらになったティディベアのお手てや取れかけた洗礼服の貝ボタンをチクチクチクチク....
輝きを失ったアクセサリーや銀食器をキュッキュッキュッキュッ....
錆付いて抜けそうになった釘をトントントントン...
ここには注射も特効薬も無いけれど、愛情が一番のお薬というわけで
きらきら太陽の光を浴びゆっくり流れる時間の中
アンティーク達がそっと息を吹き返しニコニコ笑顔に変わってゆきます。
ファブリックのお洗濯をして「わぁ、これ洗ってみたらこんな色だったんだ?」と感動し、
気の遠くなるような細かい手仕事を眺めては「この時代の女性は大変だったんだろうなぁ。」なんて
そのうち子供のような好奇心がむくむくと湧き出して、
時代文献や資料を引っ張り出してルーペ片手にふむふむ...ふぅん....
いつしかセピア色に変わった店内はコチコチ古時計の秒音とオルゴールの音に包まれて、
ふんわり優しい私の大切なひととき、これが骨董屋のささやかな愉しみの時...
「形あるものいつか壊れる」そんな寂しい言葉もありますが、思い出はいつまでも心の中に残っています。
Eglantyneからお嫁にいったあの子も、そしてあの子も
何ものにもかえがたい幸福な時間と素敵な出会いをありがとう。
今日もこうしてあなたたちと過ごす平穏な1日に感謝しています。
◆ ネットショップの考え方
仕事柄、よくIT関連のセミナーへ参加する機会があります。
アンティークとは全く無縁の世界ですが、この日ばかりは脳みそのスイッチをITモードへ切り替えて臨みます。
先日、都内で行われた某セミナーでのひとコマ。
そこでは、繁盛しているネットショップオーナー達がそれぞれに成功までの道のりや失敗談を語るという内容でした。
輸入雑貨や家具といったインテリアから、アクセサリー、子供服などのファッションなどと各界の著名な成功者が
思い思いに実例を語っていました。それぞれ商材は異なりますが、成功しているオーナー達に共通していることは
「お客様にお買い物を楽しんでいただく」ということを第一に取り組んでいらっしゃるということ。
いっけん「なぁんだ、簡単なことじゃない?」と思うかもしれませんが
彼らはWebサイトでお買い物をされたお客様にいかに喜んでいただけるか
いかに満足していただけるかということに全力を注いでいます。
どのようにしたら顔の見えない店主とお客様の間に信頼関係を築けるのか...
繁盛店の店主は日夜、並々ならぬ努力をされているといいます。
そして、注目したい点はどの成功者も必ず1度や2度大きな失敗を経験しているということです。
その大きな失敗がバネになりやがて大きな飛躍を果たしています。
失敗なくして成功は成しえなかったとそれぞれ当時の苦い思い出を振りかえっているのが印象的でした。
私自身そんな成功者達を前にする度に自分なんかはまだまだだな...と反省させられます。
そのような場所で「あなたの扱っている商材は何ですか?」という質問に対し
「1点もののアンティークです。」と答えるとたいていの人が「それは難しいビジネスですね。」と眉をひそめます。
彼ら成功者は「売れる商材は量産(*1)のできるものでなければ成功はあり得ない。」とまで断言します。
そんな時私は「お金を出せば何でも手に入る時代ですが、
1点ものだからこそ、1人1人のお客様との出会いを大切にしたいのです。」と答えています。
確かにどんなに魅力的な商品でも1点もののアンティークである以上、1人のお客様にしか提供できない、
全てのお客様にご満足いただけないのは事実です。
うちのような運営方法は「全てのお客様にお買い物を楽しんでいただく」というスタンスを堅実に守り続けている
彼ら成功者にはとうてい理解できないことかも知れません。
いつだったか、Eglantyneのお客様からこんな言葉をいただきました。
「私達消費者(お客様)は、Eglantyneからただ商品(アンティーク)を買うんじゃなくて心を買っているのよ。」
当時、ネットビジネスの方向性について迷っていた時期であった私の心に深くズシリと染み入る言葉でした。
インターネットのショッピングが盛んになり、日々めまぐるしく変化するIT社会の中で
氾濫する情報の洪水をさまよいっていると時々むしょうに息苦しくなることがあります。
忘れてはいけない昔の不便だけれど優しい暮らしがなぜ私をこうも惹きつけるでしょうか。
答えは自分の心の中にありました...
(*1) 量産=製品のコストを下げるために、同じ規格の商品を多量に作ること。
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